Aさん一家が希望したのは設備の整ったマンション。小さい子どもがいるので、足音を気にしないで済む1階部分を、じっくり時間をかけて探していました。
相場よりも安く販売されていたマンション1階の物件を見つけ、さっそく不動産業者へ連絡し、仕事が休みの日曜日に見学へと赴きました。
室内はきれいで広さも十分、1階部分ですが日当たりもよく、Aさん一家の希望を満たした理想的な物件と出会うことがかないました。
しかしこうも理想通りだと、逆に引っかかります。「なぜこれほどいい物件なのに、安い価格で提供されていて、しかも買い手がいないのか」
Aさんはすぐ安さの理由を見つけることができました。窓のすぐ外に道路があり、通行人がたやすく室内をのぞける位置関係にあったのです。
「これは確かに気になる部分だ」
あまりにも人通りが多いようであれば、ストレスの原因にもなりかねないのでこの物件は買わない方がいいだろう。そう感じたAさんは、5分ほど窓から外を眺めて通行量を確かめました。
結果、気になるほど人は通らないことを確認し、「レースのカーテンを引いておけば大丈夫だろう」という結論に落ち着いたのです。
その後トントン拍子で話は進み、Aさんは無事にこの物件を購入し、念願のマイホームを手にすることができました。
しかし、引っ越しが完了し、いざ新居での生活をスタートさせると、Aさん一家は「こんなはずじゃなかった」という大きな後海を味わうことになります。
例の窓外の通行人の数が想定以上に多いのです。とくに平日の通勤通学時間は、駅へ向かう人が列をなすほどでした。
これにはさすがに、日中家で家事をしている奥さまが参ってしまい、中が見えないようカーテンを引くことになりました。
するとどうでしようか。これまで日当たり良好で清々しかった室内が、途端にどんよりとした閉塞感に満たされるようになってしまいました。1日中力ーテンを閉めて陽光を遮断してしまったのですから、当然のことでしよう。
この状況がAさん一家に大きなストレスを与えてしまいました。
「カーテンを開けた生活がしたい」
ついに我慢ならず、Aさんはこの物件を売却し、引っ越すことを決意しました。
売却額は購入時よりもかなり安い額となり、理想の生活を送ることがかなわないだけでなく、差額分を丸々損をしたことになってしまったのです。